2012年

クロダミサト写真展「沙和子」

11月21日~12月15日
写真を通じて「からだ」に向きあうのは、簡単なようでむずかしい。「沙和子」から今回展示される新作「無償の愛」まで、クロダミサトは相手の血の流れを感じ取れるくらいの近さで、果敢にシャッターを切り続けてきた。愛おしさと探究心とが彼女を突き動かし、「からだ」の秘密が少しづつあらわになっていく。飯沢耕太郎(写真評論家)
While to some it may seem a simple task, to capture the essence of the body in photograph is difficult indeed.
From her “Sawako” series to her newest “Musho no Ai” works (translating as “Selfless Love”), Kuroda Misato achieves a particular intimacy, seeming to sense the blood flowing through the body of her subject.
She is driven by the ideas of affection and the inquisitive heart, and slowly reveals the secrets of the body.
 Iizawa Kotaro (photography critic)

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 まだ性に意識を持ち出したばかりの頃、道端に落ちているポルノ雑誌をドキドキしながらページを捲ってみた。表紙の写真からどういったものが写っているかは分かっていた。そこに写っている女を見て、私は子供ながらに身体が熱くなった。いけないものを見てしまった、という快感に近い罪悪感は、私の身体をより熱くさせた。白く切り抜かれた修正部は、まるで女の秘部が光っているかのように見え、世の中の男はこういった女の裸を見て興奮しているかと思うと、写真に写っている女がまるで女神のように見えた。女が絶対的な存在であると感じたのだ。その時の興奮は私の身体の中に燻り続け、未だその熱は冷める事を知らない。 When I was still young and only first understanding the idea of sexuality, I happened upon a discarded porno magazine and nervously flipped through the pages. Front the picture on the cover, I knew what I was going to see inside. Seeing the image of the woman sent a warm sensation throughout my young body. I was looking at something that I should not have been looking at, and that pleasure that bordered on decadence made it all the more exciting. The whited out portions of her naked images appeared to me as though her most private parts were shining out from the pages. Imagining this woman to be the object of desire of the men who look at her, I could not but see the image of Venus in her pictures. I realized how absolutely necessary women were. The excitement I felt at that time has smoldered within me since, the heat of which I have never known to diminish.(Kuroda Misato)


飯沢耕太郎×村田兼一 きのこの愉しみと恐怖mycophilia / mycophobia

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10月10日~10月27日
きのこという面妖な存在は、さまざまな病気を発症する。mycophilia(きのこ愛好症)mycophobia(きのこ恐怖症)もその典型。でもこの2つの病気、コインの裏表のように、どこかでつながっているように思えてならない。 村田兼一さんとの、きのこをテーマにした二人展。ぜひ足を運んで、あなたがどちらの病いに冒されているのかを確かめていただきたい。 (文/飯沢耕太郎)

村田タマ展「玉手厘」

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9月12日~9月29日
タマがスカートをたくし上げると星屑のように色々な物語が溢れ出しこぼれ落ちた。それは瞬きを見せる星の事もあるが、ブラックホールの如く何でも吸い込む闇の事もある。時に空を舞う白い鶴であり、地を這う黒い鶴でもある。少女の煌きと闇を、ホウキで掻き集めて仕舞い込んだのが『玉手厘』だ。蓋を開けると年老う呪いの箱に、タマは開けると少女に戻る呪いをかけた。あなたは箱の中にどんな物語を見るだろうか。(村田兼一)
7年間、写真家・村田兼一のモデルやアシスタントを務めてきたタマが、自らの表現を模索しながらの初個展を開く。大きな折り鶴などを使ったセルフポートレイトなど、甘くて危うげでイノセントなタマワールドのお披露目だ。(トーキングヘッズ叢書No.51より)This will be the first solo exhibition by Murata Tama, more often performing as model and assistant in the works of Murata Ken-ichi.

 セルフポートレート口枷屋モイラ個展
「口腔宮-oral maze-」オーラルメイズ     7月11日〜7月28日

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中村趫 個展 [BOTANICAL DOMAIN]

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5月2日~5月19日   Nakamura Kyo Photo Exhibition
幻想植物群に侵され、破滅の快毒を盛られた裸体、そしてエロスの光輝 (相馬俊樹・文)
 腐蝕と崩壊の予感を引き連れて、生の力に漲り、繊細な形で繁茂する未知の植物群が、こ惑の幻想美を誇示する女体に、欠けた卵形の腹部を抱えた懐妊の母体に、そして快楽の魔に憑かれたようにもつれ合う男女の裸体にじわりじわりと襲いかかる。得体の知れない植物群は、エロティックな裸体に、あたかもカオスを植えつけ、侵食していくかのようでもある。そして、人体の細胞を分解し、新たなエロスの秩序へと再編を試みているかのようでもある。エロティシズムが、異様なる植物の魔力を引き寄せたのであろうか。あるいは、ボタニカル・パワーの横溢する異界の磁場に、裸体と交接の神秘が捕われたのであろうか。うねるがごとき旺盛な生長力がエロスの神秘に呼応し、二つの力は絡み合いながら、一つの流動へと融合する。その激流はもつれ合う男女裸体を呑み込んで、陶酔の聖域へと連れ去っていくだろう。 裸体に、麻薬のごとき破滅の快毒が盛られる。 裸体に、デカダンスの幻影がもたらされる。
  だが、頽廃の美のうちには、たしかに灼熱に震えるエロスの血潮が勢いすさまじく流れている。
 昨年の悲惨な震災の直後、多くのイベントがキャンセルの憂き目を見るなか、異例の開催に踏み切った個展で、中村きょう氏はメランコリアをテーマにすえ、陰鬱なるサトゥルヌスの星(土星)の宿命に黒き太陽のごとき希望の光を喝破した。これは、ルネサンス新プラトン主義の総帥マルシリオ・フィチノが自らもメランコリアの苦悩の末、そこに高貴な瞑想と思惟の神的なる光輝を見出した精神と通じるだろう。そして、先日、氏から「今度の個展では久々にヌードを出します」と連絡があった。かつて、多くの愛好家を魅惑した、崩壊感覚を孕む、あのデカダン・ヌード!ただし、新作ヌード作品群は、アザー・ワールドから湧出したかのような幻想植物群に侵されている。裸体は頽廃と腐蝕に悲鳴を上げている。だが、やはり、そこには静謐にまぎれてエロスの光輝がはっきりと確認できはしまいか。

魔淫の迷宮展

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2012年4月4日~21日
相馬俊樹著魔淫の迷宮~日本のエロティック・アート作家たち~(ポット出版)刊行記念
【出展作家】井桁裕子/上田風子/佳嶋/甲 秀樹/空山基/谷神健二/たま/徳野雅仁/中村 趫/根橋洋一/長谷川友美/林良文/町野好昭/村田兼一/山本タカト

ジョン・サンテリネロス展  JOHN SANTERINEROSS [Dream Iconography]

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2月1日~2月25日
熟成を極めたエロティック・ダーク・ヴィジョン(文/相馬俊樹)
インソムニア(不眠症)の苦悩を通過して到来する、研ぎ澄まされたドリームの豊饒と、幼年時代に蓄積された暗欝なる記憶の淀みがダーク・ヴィジョンを育む。それは、特異な写真作家ジョン・サンテリネロスの脳髄のなか、エロティシズムの毒に染め上げられて、怪しくも、特異なイメージとして印画紙に定着される。 そこでは、若き女性が恐るべき神を召する巫女のごとく、あるいはトランス状態に陥った女呪術師のごとく、あるいは写真に捧げられる生贄のごとく、妖艶なる裸身をさらけだす。そして、塩化ビニール製の赤ん坊人形やら、不気味な首吊り人形やら、動物の骨格やら、がらくたのよな物品類やら、謎めいたオブジェ群やらが、魔術的香気を纏いながら、そこかしこにちりばめられる。サンテリネロスの写真錬金術とセッティング秘儀は、女性の裸体やがらくた類に失われた呪力を回復させるかのようである。 廃墟の僧院を彷彿とさせる古びた密室は、ときに、血と性血のクリムゾンにさえ彩られるだろう。酸鼻を極めた古代蜜儀宗教の儀式の悪夢と、今なおカトリシズムの深淵に懐胎される血へのフェティシズム(スティグマ=聖痕)が呼び覚まされる。 サンテリネロスは、古風なスタジオ(備え付けの舞台のある密室)にて瞑想に多くの時を費やすという。また、モデルの選択からセッティングに至るまで相当の時間をかけ、さらに、緻密な作品群はほぼ手作業によるものらしい。年にたった12作品くらいしか制作できないという、熟成を極めたサンテリネロスのエロティック・ダーク・ヴィジョンにどっぷりと浸かって、神秘のアンダー・ワールドを彷徨っていただきたい。