ジョン・サンテリネロス展

ジョン・サンテリネロス展
2月1日~2月25日
JOHN SANTERINEROSS [Dream Iconography]

熟成を極めたエロティック・ダーク・ヴィジョン(文/相馬俊樹)
インソムニア(不眠症)の苦悩を通過して到来する、研ぎ澄まされたドリームの豊饒と、幼年時代に蓄積された暗欝なる記憶の淀みがダーク・ヴィジョンを育む。それは、特異な写真作家ジョン・サンテリネロスの脳髄のなか、エロティシズムの毒に染め上げられて、怪しくも、特異なイメージとして印画紙に定着される。 そこでは、若き女性が恐るべき神を召する巫女のごとく、あるいはトランス状態に陥った女呪術師のごとく、あるいは写真に捧げられる生贄のごとく、妖艶なる裸身をさらけだす。そして、塩化ビニール製の赤ん坊人形やら、不気味な首吊り人形やら、動物の骨格やら、がらくたのよな物品類やら、謎めいたオブジェ群やらが、魔術的香気を纏いながら、そこかしこにちりばめられる。サンテリネロスの写真錬金術とセッティング秘儀は、女性の裸体やがらくた類に失われた呪力を回復させるかのようである。 廃墟の僧院を彷彿とさせる古びた密室は、ときに、血と性血のクリムゾンにさえ彩られるだろう。酸鼻を極めた古代蜜儀宗教の儀式の悪夢と、今なおカトリシズムの深淵に懐胎される血へのフェティシズム(スティグマ=聖痕)が呼び覚まされる。 サンテリネロスは、古風なスタジオ(備え付けの舞台のある密室)にて瞑想に多くの時を費やすという。また、モデルの選択からセッティングに至るまで相当の時間をかけ、さらに、緻密な作品群はほぼ手作業によるものらしい。年にたった12作品くらいしか制作できないという、熟成を極めたサンテリネロスのエロティック・ダーク・ヴィジョンにどっぷりと浸かって、神秘のアンダー・ワールドを彷徨っていただきたい。