村田兼一「少女に棲む魔法」

村田兼一写真展「少女に棲む魔法」6月1日~6月19日

ロリータ風の衣装で完璧なファッション武装をきめた美少女たちが、幻想と奇想に満たされた不思議な屋根裏部屋に閉じこもり、きれいに剃毛された剥き出しの性器を光の横溢のなかにさらけだす。隙なくゆきとどいた清楚な身繕いを引き裂いて、みだらな肉の輝きが見る者の目を射る。ときに、くっきりとあらわにされた肉襞の輝きの中心から、光を放つように淫水の虹が弧を描き出すこともあるだろう。 静謐なる魅惑のざわめきを孕んだ拒絶と、エロスの狂乱を予感させる露出の過剰。これが、村田兼一が長年追求してきた構図のエッセンスであろう。 これら二つの要素、すなわち清楚の極みと官能の狂気は激しく相反しつつも、互いを刺激し合い、蠱惑の渦のなかで融合していく。少女たちは、村田兼一のエロティックな秘儀によって、みだらの衝撃を散布しながら、高貴のアウラを身に纏い、性の熱狂を秘めた女神のごとき天上的品位を獲得する。 村田兼一の最近の作を見て、彼のスタイルがついに固まりつつあるといった印象を受けた。洗練を積み重ねてきた独自の構図に無駄を排して究極の快美を凝縮し、エロスの熱を凝固させて封じ込める。模索を繰り返したエロティシズムのスタイルが確固となる。 もはや、極度の露出を特徴とする構図のパターン以外の作にも、彼のスタイルの粋は隅々にまで浸透している。純白のストッキングと長い手袋を身につけた、ほぼ全裸の少女が髑髏に手を添えて横たわる、彼にしては珍しい新作においても、その雪肌ごときまばゆい裸身のあらゆるところから、独自のエロティシズムのスタイルが滲み出しているとはいえまいか。 (文・相馬俊樹)