櫻田宗久 蝶次元 ー此岸と彼岸の間で

男性ヌードを中心にiPadminiで撮影された日常を日記と共に展示します。

蝶次元 (川本直/文芸評論家)
「文は人なり」という言葉がある。
文章に限らず、全ての芸術は作り手の魅力の技巧的な変奏だ。
それは写真においても変わることはない。
櫻田宗久がカメラに収めた男たちの華奢な裸身は、彼自身に似て男性性を超越した官能性を帯びている。
そして、写真に現れている喪失感と気品と優しさ。
その全てはモデル、俳優、歌手、写真家と様々な顔を見せてきたアーティスト・櫻田宗久自身が漂わせるイメージと驚くほど酷似している。
「蝶次元 – 此岸と彼岸の間で」は櫻田宗久その人の魅力の秘密を私達にそっと教えてくれる私的な小宇宙なのだ。

本展によせて‐櫻田宗久 
デジタル写真を過剰に加工していくと、写真が粒子状になっていく。
私は常々、世界や人間も粒子でできているのではないかと思っている。
白昼夢の中で、私は光の世界に入っていく。
あらかじめ色が決められていない世界の中で自由な色の世界。
この世界はどこの世界なのだろう?
初めて文楽を観た時の作品が「契情倭荘子(けいせいやまとぞうし)」という演目で恋仲の二人が死んだあと蝶になるという比喩に感銘を受けた。
二次元の世界のような蝶の形態とその比喩は二次元表現である写真と写真に寄り添う終わった時間(死)という概念と重なっている。
私小説のように、普段から使っているiPad miniで毎日を撮影している。
裸の男たちは私の視覚的メタファーとして存在していた。
男たちを蝶に見たて、時間と一緒に標本にしている行為にも近いのかもしれない。
デジタル写真が加工されつくし、毎日の風景と男たちは自由な色と粒子の世界となった。
此岸と彼岸の間で男たちは生まれたがり、キラキラとした鱗粉を漂わせ蝶が舞っている。
そうだ、この世界を蝶次元と名付けよう。

櫻田宗久展 蝶次元 ー此岸と彼岸の間で
10月13日〜10月22日

会期中イベント
10月18日大塚隆史×櫻田宗久 ギャラリートーク
10月19日おおくぼけい・ソワレ ギャラリーライブ「蝶のように」
10月21日ヴィヴィアン佐藤×櫻田宗久 ギャラリートーク
10月22日ALICIA(キタムラアラタ)パフォーマンス

ber星男で同時開催
櫻田宗久写真展「もう一つの蝶次元 ーkoikoi(鯉恋)」
10月13日~31日
10月13日オープニングパーティー 20:00~

櫻田宗久 1976年7月22日生まれ。1993年にモデルとしてデビュー後、俳優、歌手、タレントとして活躍。現在は、写真家として国内外の展覧会に作品を発表している。
2011年にART&MUSICBAR「星男」を新宿二丁目にオープンした。
【協力額装】nadowa 【活版印刷】服とタイポグラフ

【掲載作品題】8月21日 16:27 蝶が沢山いる公園に一緒に行こうと言うと蝶に襲われたいと男は言う。繋いだ手が華奢で。